新しい風景と、その出会いと

© 小橋祥子
広島市現代美術館−企画展:「A window to the World/世界に開かれた映像という窓」より

絵画、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど、アートには様々な表現のメディアがあるが、田口行弘の作品は映像という形をとりながらも、他の様々な要素がちりばめられている。
2007年の作品「Moment-performative installation-」において、田口は会場であるギャラリーの床板を剥がし、様々な風景を作り出した。壁にはドローイングが展示されながら、ある日は縦横無尽に床板が張り巡らされたインスタレーション作品となり、別の日はバトミントン・コートやパーティー会場のように人々が憩うコミュニケーションの場ともなる。
田口は、開廊中会場にいて、ほとんどたった一人で重く長い床板を少しずつ動かし、その度に写真を撮る。その途方もない体力勝負の作業により、風景は徐々に様変わりする。撮りためられた千枚もの写真は繋げられ、一連の風景の変容が数分の映像の中に現れるのである。
最近作では、ギャラリーの床板は街へと出てゆき道ばたに置かれ、多くの人々の目に触れる。そして彼らは、田口に声を掛ける。「これは何?」「何をしているの?」。もはや人々には、それが何の板であるかもわからない。しかし街の一部に付け加えられた床板によって人々は、日常とは異なる新たな風景を発見するのである。
現代のアートが、絵画や彫刻から、屋内外で空間構成をするインスタレーション、さらに鑑賞者と関わることで成り立つインタラクティブなアートへと広がりをみせてゆく中で、自らの制作活動の瞬間を映像へと繋ぎ合わせた田口の作品は、それらのいずれにも当てはまりうるが、いずれにも限定されない、複合的であるがゆえに唯一の作品となった。
ドローイング、彫刻、インスタレーション、パーティー、スポーツ、のようなもの、さらには街頭に行き交う人々まで、その全てとの出会いの瞬間と風景がこの映像の中に息づいている。

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