Moment |
| ファニー・ゴネラ/vonhundert |
3週間半の作業が終わった。毎日air gartenギャラリーに通い、床板を使って様々なインスタレーションを作り出していった彼の仕事に対しての姿勢は、普通な会社員のそれに近かった。プロジェクト・スペースが開かれると出勤し、午後3時から5時まで働いて、その後家に帰る。そして、どのような仕事でもそうであるように、いくつかの決められた原則もある。 まず、展示は毎日変わる。つまりギャラリーを訪れた人達は毎回別の作品、様々なストーリーを体験していったのだ。床がまるで紙のように折り畳まれた光景を見た人もいるし、ギャラリーのスペースの中に床板でできたフェンスを見た人達もいる。この絶え間なく続いた変化はこのプロジェクトの視野を拡大したのはもちろんのこと、私達の中に様々な疑問を生むこととなった。はたしてどの展覧会を見てきたのだろう、もしくは、見てきたものは展覧会だったのだろうか? 第2の原則は、スペースの中で不動のものは、白とグレーのスペースの隅に置かれた赤のバールと、床に置かれた床板を固定していたネジのみ、ということだ。壁には、床板の配置案を示すドローイング100枚が飾られ、毎日の活動の土台となった。床板の長さが天井の高さと等しいというあまりにシンプルすぎて今まで誰も気付かなかった特徴を田口は効果的に利用し、 インスタレーションを熱狂的に、そして執拗に次々と作り上げていった。それらは目に見えないシンメトリーに支えられた林、ドミノ倒し、またはテント等、日常生活のイメージを彷彿とさせるものだった。可能性はそれこそ無限だっただろう。しかしやがて変化は途絶えた。それはあまりに普通なことなのだが、展覧会の展示期間が終わったからだ。これが第3の原則である。 この3つの原則を使って、田口は可変性と不変性を基本的要素にした言語を構築していった。田口はギャラリー・スペースを見て、その空間にあった形を作ろうとしたわけではない。彼はそのスペースの中にある要素が生む隠されたシンメトリーを使って、無数の形を生み出す実験をしていったのだ。彼の中に生まれた全ての可能性を試すことは無意味で、空虚な行為かもしれない。だが、それによって彼はより良い形、より意味のある形を作り出すという責任から解き放たれた。つまり生産と向上の関係を歪めたわけである。いわゆるポジティブな価値観というものが一挙に関係のないものとなった。彼の活動は行為が必ずしも実用性という重荷を背負わなくてもいいということ、不規則性がそのまま方法となり得ることを示している。 Yukihiro Taguchi „moment" |
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